【出足遅いカンプノウ】
FCバルセロナに魅了されて以来、本拠地カンプノウはいつか訪れたいスタジアムだった。その日を迎え、本場の雰囲気を少しでも長く味わうべく、キックオフ1時間前に足を運んだ。最寄駅はメトロ5号線Colbalanc駅、または3号線Palau Reial駅で、どちらも駅から徒歩約10分。
膨大な観客をスムーズに入退場させる為、入口は座席場所に応じて細かく分けられている。スタジアムのマップを見ると、入場ゲートは21箇所、入口は100箇所以上もある。
数々の名勝負が繰り広げられた舞台 |
膨大な観客をスムーズに入退場させる為、入口は座席場所に応じて細かく分けられている。スタジアムのマップを見ると、入場ゲートは21箇所、入口は100箇所以上もある。
<当日の座席番号>
・Acces(入場ゲート)=19
・Porta(スタジアム入口)=67
・Boca(通用門)=534
・Fila(列)=21
・Selent(座席番号)=0023
印刷チケット。番号(黄枠)通りに座席を目指す。 |
仕組みはいたって合理的で、入場ゲートでチケットをチェック後、順次所定の番号をたどっていけば、最短距離で座席に到着できる。
注意点は、Boca (通用門) を隔てて、Selent (座席番号) の偶数席と奇数席が別サイドに配置されていること。なので通用門を抜けたら、まず左右を見渡して自分の座席サイドを確認すべし。
奇数と偶数ごとに座席が並んでいる。
<Selent 1/3/5...> [Boca 1] <Selent 2/4/6...>
スタジアム内を見渡すと、観客は数えるほどで、ほぼ空席のスタンドには、"FCBARCELONA"の黄文字がくっきり浮かんでいる。あと僅か1時間で満員になるとは信じられず、開始時間を間違えたかと思ったほど。リーガエスパニョーラのファンの出足は、Jリーグに比べて随分のんびりのようだ。
試合開始1時間前のカンプノウの有様 |
退屈しのぎに場内を見回ると、建物はかなり老朽化している。座席の塗装は色褪せてるし、年季の入ったコンクリートの殺風景は、映像での華やかなピッチ上とかけ離れたイメージ。売店もほとんど営業しておらず、バックスタンド (Lateral 4ta G) の裏側は、本当に試合日か疑われるほどの閑散ぶりだった。
建物は老朽化が進んでいる |
やや失望して席に戻ると、ちょうど西日が落ちる頃合いで、薄紫色の光が山々に掛かる雲を染めていた。同時に冷たい秋風が吹き始め、日中の灼けつく暑さから、季節が変わったかのような肌寒さに。芝生上では、開始30分前とあって選手がウォームアップを始め、観客も徐々に集まりつつあった。
夕暮れがきれいな試合開始前 |
そのうち隣の若者と、あとから来た中年男が座席位置で軽く揉め始めた。若者が「ちょっと見てくれ」とチケットを差し出し、中年男も裁定を求めてくる。座席番号を見ると、中年男が正しい。若い方に通用口が1つずれていると伝えようとしたら、英語が通じない。別の客も「俺のは合ってるのだろうか」と首を突っ込む。
それぞれ母国語が異なるだけに、仲裁役の需要が生じたわけだが、これは世界中から人が集まるスタジアムならではの体験だろう。日本のプロスポーツも、今後は外国人の観客を育てていきたいもの。
Solomillo de ternera は牛のヒレ肉。柔らかい焼き加減に、塩胡椒が効いたジューシーな一品。頼んだ中ではこれが一番。肉厚で4€が安く感じられる。
最後はエビの串焼き。火を通す料理はどれも作りたてなのが良い。アリオリソース( オリーブとニンニクが入ったマヨネーズ)が、エビの風味とよく合いこれも美味。たった4皿でも、すべてにパンコントマテが付いてくるのでボリュームがあり、お腹いっぱいになった。ミネラルウォーター(1.15€)に、税金10%が掛かって、合計13.70€。
ひと通り皿が目の前に並ぶと、ひと心地ついた。背後の入口にはどんどんお客が入ってきては放置されている。断念して帰る客や案内を請う客など様々。特に外国人客が戸惑っている様子が見て取れた。数時間前の自分の姿だ。地元客はテイクアウトする人が結構いて、この混雑ではそれが賢明に思える。
【本場の雰囲気】
気がつくと観客席が埋まっていた。TV放送優先で開始時刻の遅さが指摘されるリーガだが、平日20時のキックオフは妥当か。ゴール裏がずっと合唱するスタイルではないので、10万人近い観客数ながら、わりと静かな雰囲気。10数分のうちに一気に客席が埋まった |
双方、先週末の疲労が抜けきってないのか、試合はふわっとした立ち上がりだった。ちなみにリーガの試合日程は直前まで確定しないケースがあり、今回旅程を決める際も焦らされた。選手にとっては調整の都合もあるから尚更だろう。
熱の入らない序盤だったが、バルサが得点を重ね始めると、大観衆も盛り上がり始め、折に触れて自然発生的な大声援がスタジアムを包んだ。
バルサは派手なプレーが続出するわけではなく、ショートパスという基本中の基本を高度に紡いでいく印象。これを極めて素早く正確に、最適の判断で遂行していく。選手はボールに触れる前に、その後の展開を把握しているかのよう。目標(ゴール)を常にとらえつつ、その機に非ずと見れは躊躇なく後方に下げ、出し入れも緩急自在。相手がそれに合わせるだけなら、完全にバルサのペースになっている。
バルサは派手なプレーが続出するわけではなく、ショートパスという基本中の基本を高度に紡いでいく印象。これを極めて素早く正確に、最適の判断で遂行していく。選手はボールに触れる前に、その後の展開を把握しているかのよう。目標(ゴール)を常にとらえつつ、その機に非ずと見れは躊躇なく後方に下げ、出し入れも緩急自在。相手がそれに合わせるだけなら、完全にバルサのペースになっている。
目立つのはメッシだが、差配するイニエスタにも同等の凄みを感じた。彼がタクトを振り、ソリストが見せ場を作る、そんな光景。
点差が開いた後半、メッシが退くと、ゲームへの関心は薄れ、あとは華麗なパス回しを楽しむだけの展開になった。そしてそろそろ寒さが耐え難くなってきた。9月中旬のバルセロナの気温は、日中は長袖の袖を捲るほど陽射しが強いが、夜は急激に冷え込むので、防寒対策は考慮しておいた方が良い。
参考: バルセロナの平均気温
結局予定調和の如くバルサの完勝。熱戦とはいかず、満足度はもう一つだったが、毎試合凄い展開になるわけもないので、これは仕方ない。白熱さを望むなら、タイトルの帰趨を占うような勝負に旅程を合わせるしかないだろう。
終了後は、座席が上階層であるほど階段の渋滞にはまり、その分出るのが遅くなる。とはいえ10万人近くが一斉移動している事情を考えれば、比較的スムーズに吐き出してはいる。時刻は22時過ぎだが、外は大勢の人間で賑わっており、スタジアム周辺に限って言えば、治安に不安を感じる事は無かった。
【美味のタパス】
旅先で美味しいものにありつくには、行き当たりばったりでは難しい。バルセロナはグルメが楽しみだったから、3日という短期間を有効に使おうと、あらかじめ調べて行った。気に入った2店をピックアップ。
まずは ”Cerveceria Catalana”(セルべセリア·カタラン)。ここは翌日再訪したくらい、満足度が高かった。
トルティーヤはスペイン風オムレツ。塩加減と火の通し方が絶妙で、シンプルな分、誤魔化しがきかないから、これが美味しいと他の皿にも期待が高まる。添えられているのはパンコントマテというバルセロナ名物で、パンにトマトとニンニクとオリーブと塩を擦り付けたもの。レシートには計上されてなかったのでサービスのようだ。
トルティーヤ (2.90€)、生ハム(1.95€) |
Solomillo de ternera は牛のヒレ肉。柔らかい焼き加減に、塩胡椒が効いたジューシーな一品。頼んだ中ではこれが一番。肉厚で4€が安く感じられる。
Solomillo de ternera (3.90€) |
最後はエビの串焼き。火を通す料理はどれも作りたてなのが良い。アリオリソース( オリーブとニンニクが入ったマヨネーズ)が、エビの風味とよく合いこれも美味。たった4皿でも、すべてにパンコントマテが付いてくるのでボリュームがあり、お腹いっぱいになった。ミネラルウォーター(1.15€)に、税金10%が掛かって、合計13.70€。
Burocheta de Langositina (3.80€) |
物価が異なるとはいえ、パリでは平凡なサンドイッチでも5€以上したのに比べると、コスパは圧倒的にバルセロナが上回っている。Cerveceria Catalanaは立地も良く、カサ・ミラとカサ・バトリョはそれぞれ徒歩5分、サクラダ・ファミリアも徒歩20分ほどだから、ガウディ建築巡りの食事処としても便利。
【タパス店2軒目】
夕食で訪れた。カタルーニャ広場からランブラ・デ・カタルーニャ通りを北に向かって500mほどの場所。見つけやすいが、アクセスが良い分、店内はごった返している。入口に立っても、日本のような「何名様ですか?」などというご案内は無い。
ここを訪れる前に別の店で似た体験をしていた。入るとテーブルもカウンターも満席状態。店員を見渡しても、皆忙しそうで誰もこちらに気にしない。人がひっきりなしに店内を移動するので、すぐに居辛くなってその店は諦めたのだった。
そんな失敗を思い出しながら、ここは何としても座席を確保すべく、まず店内の様子を観察した。新規のお客に店員が気をとめないのは同じで、忙しい時間帯は自分で席を取って、さっさと注文するのが流儀に見える(バルではなくレストランだと事情が違うかもしれない)。ちょうど目の前のカウンターで1席空いたので、隣の人に一言かけ首尾よく居場所を手に入れた。
カウンター上とガラスケース内には、様々なタパスが所狭しと並べられていて、メニューの読めない外国人にはありがたい。席はキャッシャーの側だったから店員を捕まえやすく、「これとこれとこれ」と指差し注文した。店員も心得たもので、多少遠くにある料理でも「これか?」「違う、その横」といった具合で、勘良く料理を皿に取ってくれる。一旦お客として認知してもらえばあとはやり易そうだった。
Ciudad Condalのカウンター席 |
ひと通り皿が目の前に並ぶと、ひと心地ついた。背後の入口にはどんどんお客が入ってきては放置されている。断念して帰る客や案内を請う客など様々。特に外国人客が戸惑っている様子が見て取れた。数時間前の自分の姿だ。地元客はテイクアウトする人が結構いて、この混雑ではそれが賢明に思える。
ここは予習無しで、気の向くまま頼んだ。食欲をそそるオリーブ漬けのタパスは、どれも塩辛く、すぐ喉が渇いてビールをごくごく飲む。酔いが回ると周囲の喧騒が楽しく感じられて至極心地良い。おかげで料理の写真を撮るのを忘れた。
注文は都度伝票に追記する方式。矢継ぎ早に多数の客を捌きながらよく付けられるなと感心していたが、ホテルに帰った後レシート見るとビール1杯分抜けていた。申し訳ないけどご馳走様。
[Ciudad Condalの会計]
- Moni Variado ×3 (1.45*3= 4.95€)
- Anchoas (4.95€)
- Copa Cerveza (2.35€)
- Bacalao Llauna (9.75€)
合計: 21.40€(税込)
数日の感想に過ぎないが、バルの接客は決して粗野ではないけど、愛想が良いわけでも、懇切丁寧でもない。でもそれが普通で、こちらが何を欲するか伝える姿勢があれば、ちゃんと応じてくれる。タパスには様々な種類があるので、その時の気分で見繕うのも良いし、予め目当ての一品を調べておくのも一つのやり方。
ひとつ留意点は、塩気で異常に喉が乾いたこと。食後数時間はミネラルウォーターが必須だった。
(2013/9/24)